- 就労継続支援B型の利用料はいくら?
- 利用料の減免制度はある?
- 利用料はどのように支払うの?
この記事ではこれらの疑問について、詳しく解説します。
就労継続支援B型(以下、B型事業所)では、原則として月の利用料の1割を利用者さんに負担していただきます。
ただし、利用者さんの世帯所得に応じて上限額が決まっており、その額を超えることはありません。就労センターでは約95%の方が無料で利用しています。
この記事では、B型事業所の利用料、その他に必要な費用、減免制度、支払い方法などについて解説します。
また「お仕事をするのになぜお金を払わないといけないの?」といった疑問にもお答えしますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
利用料は世帯所得によって変わる
前述した通り、B型事業所の利用料は基本的に1割負担ですが、世帯所得によってその上限額が異なります。
B型事業所の利用料がどのように決まっているか、見ていきましょう。
利用料は原則1割負担
B型事業所を利用した場合、1ヵ月にかかったサービス利用料の1割を利用者さんが支払います。
例えば、1ヵ月分の利用料が10,000円だとすると、利用者さんが支払う額は1,000円です。
「なぜお仕事をするのにお金がかかるの?」と思う方もいるかもしれません。その理由は、B型事業所が「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスであるためです。
障害福祉サービスにかかる費用は、国・都道府県・市が9割、利用者さんが1割を負担する仕組みとなっています。
ただし、利用者さんの経済的負担を考慮するため、支払い額には上限が定められています。
利用料の上限額
利用者さんが支払う料金の上限額は世帯所得によって異なります。世帯所得の範囲は次の通りです。
障害のある本人の年齢 | 世帯所得に含まれる所得 |
---|---|
18歳以上 | 本人と配偶者(夫・妻)の所得 |
18歳未満 | 障害当事者とその両親の合計所得 |
利用者さんが負担する利用料金の月額上限額は、以下の4区分に応じて決められています。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税が非課税の世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税が課税されている世帯(※1) ※20歳以上で入所施設・共同生活援助(グループホーム)を利用している方を除く(※2) |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
(※1)世帯所得がおおよそ670万円以下が目安です
(※2)20歳以上の入所施設・共同生活援助(グループホーム)の利用者さんは、生活保護・低所得世帯でない場合は一般2に含まれます
参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」
表の通り、生活保護世帯や低所得世帯の方は利用料が0円(無料)です。就労センターでも利用者さんのほとんどが無料で利用しています。
1日あたりの利用料
B型事業所の1日あたりの利用料は、事業所のある地域や工賃額、職員の人数などによって異なります。
愛知県内のB型事業所の場合、1日あたりの利用料は600〜900円程度が相場です。ただし、生活保護世帯や低所得世帯の方は0円で利用する事ができます。
工賃によって利用料が変わることもある
B型事業所で得た工賃は世帯所得に加算されるため、工賃によって利用料が変わるケースもあります。
特に配偶者の所得がある場合は、所得区分の「一般1」や「一般2」に該当し利用料が発生する可能性があります。
利用料以外に発生する事がある費用
B型事業所の利用料の他に、事業所によって発生する事がある費用は以下の通りです。
- 昼食代
- 交通費
- レクリエーション費用
- 作業着にかかる費用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
昼食代
B型事業所によっては昼食代が必要になるところと、無料で昼食を用意してくれる事業所があります。厚生労働省の調査によると、B型事業所の1ヵ月分の昼食代は、利用者さん1人につき「274.6~431.4円」ほどです。
参考:厚生労働省「食事提供体制加算等に関する実態調査」
交通費
B型事業所に通うには交通費がかかる場合もあります。交通手段として考えられるのは次の8つです。
- 事業所による送迎
- 徒歩
- 自転車
- 事業所の送迎
- 電車
- バス
- タクシー
- 自家用車
交通費を抑えたい方は、B型事業所の77.3%が無料で事業所送迎を行っているのでおすすめです。
自治体によっては、電車・バス代金や、身体障害のある方が自家用車を改造するための費用を助成しています。具体例として、愛知県半田市が行っている交通費の助成制度を見てみましょう。
助成制度 | 対象者 | 助成内容 |
---|---|---|
半田市身体障がい者用自動車改造費助成事業 |
|
自動車改造にかかった費用を助成する ※上限10万円 |
障がい者(児)バス運賃扶助事業 |
・身体障害者手帳
・療育手帳 ・精神障害者保健福祉手帳 ・戦傷病者手帳 ・被爆者手帳
・身体障害者手帳の第1種をお持ちの方
・療育手帳をお持ちの方 ・精神障害者保健福祉手帳1・2級をお持ちの方 |
バスの運賃が無料になる「特別乗車証」を交付する |
半田市障がい者(児)タクシー料金助成事業 |
|
半田市と協定を結んだ会社のタクシーを利用する際に、料金が割引される |
半田市身体障がい者自動車運転免許取得費助成制度 |
|
運転免許の取得にかかった費用の3分の2以内の額を助成する ※上限10万円 ※1人1回限り |
参考:愛知県半田市「自動車改造/バス券/タクシー券/自動車運転免許取得費助成」
交通費の助成制度については、お住まい市区町村の公式ホームページをご覧ください。
レクリエーション費用
B型事業所によってはレクリエーション費用が発生する場合もあります。レクリエーションとは、季節に応じたイベントや外出、食事会などを指します。
- お花見
- フルーツ狩り
- 買い物
- 忘年会
レクリエーション費用が発生する場合、数百円~1,000円程度が多くなっておりますが無料のB型事業所も存在します。
作業着にかかる費用
B型事業所のお仕事内容によっては、作業着を用意する必要があります。
ただし、作業着を無料で貸し出してくれる事業所も多いです。お仕事を始める前に、準備が必要な持ち物があるか事業所の職員へご確認ください。
利用料の減免制度
B型事業所の利用料の支払いが難しい場合、利用料が減額される「減免制度」が利用可能です。減免制度について、実例と併せて紹介します。
特別な事情がある場合の減免
B型事業所の利用料支払いが難しい場合、市区町村に申請し、認められれば利用料の支払いが減免されます。
- 災害によって大きな損害を受けた場合
- 失業や病気、死亡などによって、生計を支えている方の所得が大幅に減少した場合
また、利用料の上限額を変更したい方は、申請し承認されれば翌月、または申請当日から上限額が変更されます。詳しくは以下の通りです。
- 10月8日に申請した場合:11月1日から上限額が変更される
- 10月1日に申請した場合:10月1日から上限額が変更される
支払いが難しい際は、市区町村の障害福祉課にご相談ください。
共同生活援助(グループホーム)利用者への家賃補助
B型事業所の利用料ではありませんが、日中活動はB型事業所を利用し、住まいはグループホームという方も多くいますので、グループホームにかかわる減免制度についても紹介します。
グループホームを利用している生活保護世帯や低所得世帯の方は、最大1万円の家賃補助が支給されます。
共同生活援助(グループホーム)は、18歳以上の障害のある方が共同生活しながら、日常生活の援助を受けるサービスです。
高額障害福祉サービス等給付金の還付
次のサービスを利用している方が、同一世帯に2人以上いる場合や、1人で複数のサービスを利用している場合に支給される事があります。
- 障害福祉サービス(B型事業所、グループホーム、施設入所支援など)
- 介護保険サービス(訪問介護、通所介護、特別養護老人ホームなど)
- 補装具
- 障害児入所・通所支援(児童発達支援、放課後等デイサービスなど)
1ヵ月のサービス利用料の合計金額が基準額を超えた場合、超過した分があとから支払われます。給付を受けるには、市区町村への申請が必要です。
生活保護への移行防止
障害福祉サービスの利用料や食費などを負担すると生活保護水準になってしまうと認められた場合、生活保護の対象とならない水準まで実費負担額を下げることができるため、お住まい市町村の障害福祉担当課に確認してみましょう。
実例:減免制度を使って就労継続支援B型を利用した例
就労センターの利用者さんのなかには、以下の減免制度を利用している方もいらっしゃいます。
- 複数の障害福祉サービスを利用しているため、費用が合算された
- グループホームを利用している方への家賃補助を利用した
参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」
利用料の支払い方法
B型事業所の利用料は、次の手順で支払います。
- B型事業所から利用料の請求書が発行される
- 請求金額を確認する
- 事業所が指定する方法で利用料を支払う
主な支払い方法は、以下の表の通りです。
支払い方法 | 支払い方 |
---|---|
現金支払い | B型事業所に現金にて支払う |
口座振替 | 口座から利用料が自動で引き落とされる |
指定銀行口座への振込 | B型事業所が指定する銀行口座に利用料を振り込む |
工賃から差し引き | 工賃から利用料を差し引いた金額が支給される |
支払い方法について分からないことがあれば、事業所の職員にお聞きください。就労センターでは、利用者さんの負担にならないよう、支払い工賃から利用料を相殺する事も可能です。
利用料についてよくある質問
B型事業所の利用料について、よくいただく質問にお答えします。
Q.利用料が工賃の額を超えることはありますか?
B型事業所の利用料が工賃の額を超えるケースはほとんどありません。厚生労働省によると、利用者さんの95.4%が無料で利用しているためです。
参考:厚生労働省 平成30年度「利用者の状況について」
Q.障害年金をもらっていると利用料は増えますか?
障害年金をもらっているから必ず利用料が発生するというわけではありません。
障害者控除などが考慮されて、利用料が発生するしないが決まるため、心配な方はお住まいの市役所・町村役場で課税証明書を発行してもらいましょう。
参考として、令和6年度の障害基礎年金額は次の通りです。
障害等級など | 本人の生年月日・子どもの人数 | 年金額 |
---|---|---|
障害基礎年金1級 | 昭和31年4月2日以後生まれの方 | 1,020,000円+子の加算額※ |
昭和31年4月1日以前生まれの方 | 1,017,125円+子の加算額 | |
障害基礎年金2級 | 昭和31年4月2日以後生まれの方 | 816,000円+子の加算額 |
昭和31年4月1日以前生まれの方 | 813,700円+子の加算額 | |
子の加算額 | 2人まで | 1人につき234,800円 |
3人目以降 | 1人につき78,300円 |
※「子」とは、18歳になった日以降の最初の3月31日までの子、または障害等級1・2級にあたる20歳未満の子を指します
参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額 障害基礎年金の年金額(令和6年4月分から)」
Q.親の所得は世帯所得に含まれますか?
18歳以上の方の場合、ご両親の収入は世帯所得に含まれません。
就労継続支援B型について
ここまでは利用料について解説しましたが、ここでもう一度、B型事業所の利用方法について振り返ってみましょう。就労継続支援A型や就労移行支援との違いも解説します。
就労継続支援B型の利用方法
B型事業所の利用方法は、以下の通りです。
- STEP1主治医に相談する現在通っている医療機関がある場合、主治医に「B型事業所を利用したい」と相談し、通所してもよいか判断してもらいましょう。
- STEP2B型事業所を探す主治医から許可が下りたら通いたい事業所を探します。事業所を探す方法として、インターネットやお住まいの地域の障害福祉課、相談支援事業所に相談するなどの方法があります。
気になる事業所があれば、見学や体験利用をしてみましょう。事業所の仕事内容や時間、雰囲気などは、実際に見たり体験したりしないと分からない部分もあるためです。 - STEP3市区町村の障害福祉課に利用申請する通いたい事業所が決まったら、お住まいの市区町村の障害福祉課に利用申請をします。障害福祉サービスを利用するには、障害福祉サービス受給者証の申請手続きが必要なためです。
申請書類の一つに「サービス等利用計画書」があります。障害福祉サービスを何回利用してどのような生活を過ごすのか等が記載されている書類になり、相談支援事業所に無料で作成してもらう事もできますが、自身で作成することもできます。
申請書類の内容が分からない場合は、障害福祉課や相談支援事業所の「相談支援専門員」に聞いてみましょう。 - STEP4障害福祉サービス受給者証の発行・利用開始市区町村に申請書類を提出し、利用可能と判断されれば障害福祉サービス受給者証が発行されます。手元に届いたら事業所と利用契約を結び、利用を開始しましょう。
就労継続支援A型との違い
就労継続支援A型事業所(以下、A型事業所)とB型事業所の違いは雇用契約の有無です。
A型事業所は利用者さんと雇用契約を結ぶため、都道府県の最低賃金以上の給料が保障されます。B型事業所は雇用契約を結ばないため、各事業所が定める工賃額が支給されます。
A型事業所はB型事業所より給料(工賃)が高い反面、お仕事の内容もやや難しい場合が多いです。
就労移行支援との違い
B型事業所は自分のペースで自分らしく多様な働き方を重視していますが、就労移行支援は18歳以上の障害がある方が、一般就労を目指すための訓練を受けられるサービスです。
また、就労移行支援の利用期間は原則2年間と定められています。一方でB型事業所の利用期間は特に決まっておりません。
就労センターなら自分に合った働き方ができる
B型事業所「就労センター」の特徴は次の5つです。
- お仕事の種類が豊富
- 週1回半日から利用可能
- 落ち着いた作業スペース
- 工賃が高い
- 昼食・送迎が無料
就労センターは13年の運営実績があり、これまでに多くの企業からお仕事を受注してきました。その実績を活かして、利用者さんの障害特性や体力、得意・不得意を考慮し、パソコン作業や軽作業など、さまざまな種類のお仕事を提供できます。
就労センターは週1回半日から利用でき、徐々に利用回数を増やすこともできます。1事業所あたり10ヵ所以上の個室を用意しているため、人目を気にせず、黙々と作業をしたい方にもおすすめです。
工賃も県の平均より高い額をお支払いしています。詳しくは以下をご覧ください。
事業所の月額工賃 | 金額 |
---|---|
就労センターの月額工賃 | 42,000~47,000円ほど |
愛知県内のB型事業所の平均工賃月額(令和5年度) | 23,428.4円 |
また、就労センターでは、日替わりメニューの昼食を無料で提供しています。送迎も無料で行っているので、交通の便が悪い方や公共交通機関が苦手な方でも気軽にご利用いただけます。
B型事業所での働き方については以下の記事で詳しく紹介しています。
【まとめ】就労継続支援B型の利用料について
B型事業所では、月の利用料の1割を利用者さんに負担していただいています。ただし、世帯所得によって上限額が決められており、生活保護や低所得世帯の方は無料で利用可能です。
利用料のお支払いが難しい場合、市区町村に申請し認められると利用料の一部が免除されることがあります。
支払い方法は事業所によって異なるため、各事業所にご確認をお願いします。
B型事業所の利用料や減免制度、お支払い方法についてご不明な点がございましたら、就労センターまでお気軽にご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
2014年に行政書士資格取得後、行政書士法人にて研鑽を積み、2016年から障害福祉分野に注力。福祉事業所には欠かせない都道府県・市町村への各種申請件数は100件以上。
また、福祉施策調査を実施し、障害福祉事業所に対し、運営提言も行っている。「行政書士ありもと法律事務所」の代表行政書士でもある。
大学では社会福祉学を専攻し、社会福祉士・精神保健福祉士の資格を取得。障害者就業・生活支援センターと就業継続支援事業所にて精神障害・発達障害のある方を中心とした就労支援に携わる。現在は障害福祉領域に関する知識と経験を活かし、ライターとして活動中。