- 地域活動支援センターと就労継続支援B型って何が違うの?
- 地域活動支援センターでは給与をもらえるの?
- それぞれの対象者や利用方法を知りたい
この記事ではこのような疑問を解決します。
地域活動支援センターと就労継続支援B型は、ともに障害のある方を対象にした日中活動施設です。
どちらかを利用したいけど「具体的な違いが分からない」「自分にはどちらが合っているのか分からない」といった方も多いことでしょう。
この記事では、活動内容や対象者などを中心に地域活動支援センターと就労継続支援B型の違い、またそれぞれを利用するメリットなどについて解説します。
目次
地域活動支援センターと就労継続支援B型の違い
地域活動支援センターと就労継続支援B型、どちらも障害を持つ方をサポートする同じ施設に思えるかもしれませんが、実際はその役割も違えば活動内容も異なります。
それぞれの違いについて、項目別に解説していきます。
役割の違い
地域活動支援センターと就労継続支援B型における社会的な役割の大きな違いは、就労の機会を提供しているか否かです。
障害者総合支援法においては、地域活動支援センターは「地域生活支援事業」と定義されているのに対し、就労継続支援B型は障害福祉サービスの「訓練等給付」とされています。
障害を持つ方が自立した日常生活や社会生活を送ることができるようにサポートすることを目的とした事業のこと。
障害を持つ方が自立した生活や社会生活を送るために必要な訓練の機会を提供するサービスのこと。
地域活動支援センターと就労継続支援B型、それぞれの役割について見ていきましょう。
地域活動支援センター
障害を持つ方の中には、思うように社会との繋がりを持てずに孤立してしまう人も少なくありません。
地域活動支援センターはそのような方に対して、創作活動やグループ活動などを通じて日中の居場所づくりや社会交流の場を提供し、地域社会との繋がりを支援する役割を担っています。
就労継続支援B型
一方、就労継続支援B型は、障害者総合支援法に基づく就労支援サービスとして、就労の機会を提供し就労に必要な能力を育成する役割を担っています。
B型事業所の利用者さんが従事する「生産活動」と呼ばれる労働に対しては工賃が支払われます。
就労センターに通う利用者さんも、日々自らの労働で工賃を得ることに喜びを感じながら、自分のペースで無理なく働いています。
※後述しますが、地域活動支援センターも生産活動に携わった場合はB型事業所と同じように工賃が支払われます。
活動内容と工賃の違い
地域活動支援センターの活動内容と工賃
地域活動支援センターは「基礎的事業」と「機能強化事業」の2つに分かれており、基礎強化事業はその中でさらにⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型の3つに分類されています。
基礎的事業では、創作活動や生産活動の機会を提供しています。具体的には地域イベントに参加したり、手芸品や工芸品を制作販売したり書道や絵画などをします。
様々な活動がありますが、地域社会との繋がりを見据えたものが多く、結果的に利用者さんの生きがいや居場所つくりに繋がることを目的としています。
機能強化事業は、基礎的事業に加えてより手厚い人員配置や機能を備えた地域活動センターの支援を充実させた事業です。Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型の3つに分類されており、利用人数や活動内容などが異なっています。
Ⅰ型 | 地域の医療や福祉機関と連携して障害を持つ方のサポートや困り事相談などを行っています。また、地域住民がボランティアに参加しやすくなるような取り組みや、障害者への理解を深める活動もしています。 Ⅰ型には社会福祉士や精神保健福祉士などの専門職員の配置が義務付けられており、1日あたりの利用者数は20名以上と定められています。 |
Ⅱ型 | 就労が困難な障害を持つ方に対して、身体機能の改善や維持を目的とした「機能訓練」や、就労に向けて様々なトレーニングを行う「社会適応訓練」などを行います。 また、入浴サービスなど生活面のサポートも行っています。1日あたりの利用者数は15名以上と定められています。 |
Ⅲ型 | 事業内容は基本的にⅡ型と同じですが、運営にあたっては、通所による障害者支援の実績が5年以上あることが求められます。 1日あたりの利用者数は10名以上と定められています。 |
地域活動センターにおける活動では基本的に収入は発生しませんが、生産活動(作業)を行った場合のみ、利用者さんに工賃(作業代)が支払われる事があります。
生産活動を行っている地域活動支援センターによって得られる工賃額は異なりますが、2020年6月調査では月額平均工賃額は3,532円となっております。
就労継続支援B型の活動内容と工賃
就労継続支援B型では、軽作業を中心とした就労機会や、またそれらを通じて一般就労に必要な知識や技術、ビジネスマナーなどの習得機会を提供しています。
1日のうち数時間だけ、週1回から通える事業所もあるので、自分の体調や希望に合わせて無理なく働くことができます。
働き方も様々で、事業所に通って働くこともできますし、一般企業に出向したり、在宅でパソコン作業などに取り組むこともできます。
B型事業所での働き方については以下の記事で詳しく紹介しています。
就労継続支援B型の最低工賃月額は3,000円以上と定められているので、生産活動を行った際に支払われる工賃が3,000円未満になることも少なくありません。
就労センターでは、障害年金と合わせて地域で安定して生活していけるよう、なるべく高い工賃が支払えるように取り組んでいます。
<収入例>
月額工賃42,000円~52,000円
工賃には各種手当(利用期間、通所日数、生産活動実績等による)も含まれます。
対象者と利用料金の違い
地域活動支援センターの対象者と利用料金
地域活動支援センターの対象者はセンター周辺にお住まいの障害を持つ方になりますが、センターが存在しない市町村も多いため、センター所在地に住んでいる方だけが対象ではありません。
対象年齢は法的に定められていませんが、15歳以上、18歳以上としているセンターが多いです。
利用に際しては「障害福祉サービスの受給者証」と「地域生活支援事業の受給者証」が必要になります。
障害者手帳を持っている方を対象にしているセンターも少なくありませんが、「自立支援医療受給者証を持っている」「障害基礎年金や障害厚生年金を受給している」など、他の条件を満たせば受給者証が発行される場合もあります。
地域活動支援センターは、基本的には無料で利用できるところがほとんどですが、月額100円程度の利用料金がかかることもあります。
また、利用料が無料の場合でも、食事代や入浴代、レクリエーション代などは実費となる場合がありますのでご注意ください。
就労継続支援B型の対象者と利用料金
就労継続支援B型は障害や難病などを持つ方で、以下のいずれかに該当する方が利用対象になります。(障害者手帳はなくても大丈夫です)
- 就労経験はあるけど、障害や年齢、体力の面で一般企業で働くことが困難になった方
- 就労移行支援を利用したけど、一般就労や就労継続支援A型での就労が難しいと判断された方
- 上記に該当しない人で、50歳に達している方、または障害基礎年金1級を受給している方
- 就労移行支援事業者などによって行われる就労希望者の特性や能力、勤労意欲などを調べるアセスメントを受け、就労面での課題があるとされた方
引用元:厚生労働省 平成28年12月「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス」
就労継続支援B型の利用料金は基本的に1割負担となっており、世帯収入によって負担上限額が決まっています。
利用者が18歳以上の場合は、親兄弟と同居していても障害者本人と配偶者だけで世帯収入を判定します。
区分 | 世帯の課税状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(注1) | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
一般2 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円以上) | 37,200円 |
対象となるのは前年度の世帯収入となりますが、自治体によって料金設定や条件などが異なる場合もありますので、詳しくは市町村の障害福祉担当課にお問い合わせください。
地域活動支援センターとB型事業所を利用する流れ
続いては地域活動支援センターと就労継続支援B型、それぞれの利用方法について解説します。
地域活動支援センターの利用の流れ
地域活動センターを利用する流れは以下の通りです。
- STEP1障害福祉担当課に相談するまずはお住まいの障害福祉担当課窓口へ相談しましょう。
担当職員の方が希望する活動内容やニーズなどを詳しくヒアリングのうえ、地域にある施設や利用手続きに必要な書類などについてアドバイスしてくれます。 - STEP2施設の見学利用したい地域活動支援センターに実際に行って見学をしましょう。
見学を通じて、そのセンターの活動内容や雰囲気、職員の対応などを事前に確認しておくことをお勧めします。センターによっては体験利用できる場合もあるので、積極的に参加してみましょう - STEP3申請手続き施設見学の結果、利用を決めた場合は障害福祉担当課で申請手続きをします。
自治体やセンターによっては、利用のために地域生活支援事業受給者証や障害福祉サービス受給者証が必要な場合があるからです。 - STEP4認定調査申請手続き後、市区町村による調査が行われます。
市区町村の認定調査員が、利用回数や障害の状況、日常生活などについて利用者本人やご家族から聞き取り、調査します。 - STEP5受給者証の発行・利用開始市町村から利用許可が下りると受給者証が発行されます。受給者証を受け取ったら、利用する事業所と契約を結んで利用開始となります。
就労継続支援B型の利用の流れ
就労継続支援B型を利用する流れは以下の通りです。
- STEP1利用したいB型事業所を決めるお住まいの地域にあるB型事業所の中から利用したいB型事業所を決めます。
自治体によっては利用する事業所が内定していないと受給者証の利用申請ができない場合があるので、見学や体験を通じて利用する事業所を決めておきましょう。 - STEP2申請書類をもらうお住まいの地域の障害福祉担当課窓口で、就労継続支援B型を利用したい旨を伝えると申請書をもらえます。
- STEP3認定調査市区町村の認定調査員が、利用回数や障害の状況、日常生活などについて利用者本人やご家族から聞き取り、調査します。
- STEP4サービス等利用計画書の作成B型事業所を利用するにあたって、活動内容や目標、利用頻度などを盛り込んだサービス等利用計画書を作成します。 作り方が分からない時は地域の相談支援専門員が無料で作成してくれます。※市区町村により異なります。
- STEP5必要書類の提出サービス等利用計画書と窓口でもらった申請書・必要書類を提出します。
- STEP6受給者証の発行・利用開始市区町村から利用許可が下りると、B型事業所の利用に必要な障害福祉サービス利用受給者証が発行されます。受給者証を受け取ったら利用したいB型事業所と契約を行い、利用開始となります。
利用するメリット
地域活動支援センターと就労継続支援B型は、共に地域社会との繋がりが持てる、居場所ができるという大きなメリットがありますが、その他にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
地域活動支援センター
地域活動センターを利用するメリットは以下の3つです。
- 通える居場所ができる
- 作業はせずに生活リズムをつくれる
- 散歩などのプログラムに参加できる
通える居場所ができる
創作活動をはじめとする様々な活動に参加することにより、日中の居場所づくりをすることができます。
定期的に通い続けると他の利用者さんとの親睦も深まるので、仲間づくりや社会交流の場としても利用でき、地域の中で孤立してしまうことを防げます。
作業はせずに生活リズムをつくれる
地域活動支援センターを利用し続けると、決められた日時に外出するようになるため、生活リズムを整えることができます。
昼と夜が逆転した生活を送っている、朝なかなか起きられないなど、生活リズムが乱れがちな方でも、特別な作業をせず通い続けるだけで生活リズムの回復が期待できます。
散歩などのプログラムに参加できる
地域活動センターでは、散歩やヨガ、エアロビクスなどの運動プログラムに参加することができます。
適度な運動は体力回復や健康維持に効果的ですし、屋外での散歩は良い気分転換になってリフレッシュできるでしょう。
就労継続支援B型
就労継続支援B型を利用するメリットは以下の4つです。
- 自分のペースで無理せず働ける
- 比較的簡単な作業が多い
- 就職に向けてスキルアップできる
- コミュニケーションが苦手な人でも通いやすい
自分のペースで無理せず働ける
就労継続支援B型では、利用者さんの障害や体調などに合わせて週1回から利用可能な事業所もあります。
就労センターも週1回半日から利用する事ができ、多くの利用者さんが体調や体力を考慮した自由な働き方をされています。
また、就労センターでは在宅ワークや施設外就労などの様々な働き方を取り入れていますので、働く場所や時間の自由度がより高くなっています。
比較的簡単な作業が多い
B型事業所で行う生産活動の多くが、障害を持つ方でも無理なくこなせる簡単な作業となっています。
具体的には、製品や部品の組立て、検品、梱包、シール貼り、封入などの軽作業になりますが、最近ではパソコン作業に取り組める事業所も少なくありません。
就労センターでは、データ入力や編集などのパソコン作業をはじめ、組立て等の簡単な作業まで、幅広いお仕事をご用意しています。
就労センターのパソコン作業については以下の記事で詳しく紹介しています。
就職に向けてスキルアップできる
就労継続支援B型では、一般就労を希望する方に対して就職に必要なスキルを習得できる取り組みを行っている事業所もあります。
作業内容も利用者さんの能力や希望する職種に合わせたものが選ばれ、作業をこなしながら就職に必要なスキルを効率良く養っていくことができます。
コミュニケーションが苦手な人でも通いやすい
障害を持つ方のなかには「コミュニケーションが苦手」「人と接するのが怖い」という人も少なくないでしょう。
B型事業所はそのような特性を持つ方への理解があるので、比較的過ごしやすい環境が整っています。
就労センターでも1事業所あたり10部屋以上の個室空間をご用意しており、利用者さんがストレスなく落ち着いて作業できる環境づくりに努めています。
地域活動支援センターやB型事業所の他に利用できる施設
障害を持つ方が利用できる支援施設は、地域活動センターやB型事業所の他にもあります。
実際にどのような施設があるのかご紹介しますので参考になさってください。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、B型同様、障害を持つ方へ働く機会の提供を行うと共に、一般企業などで働くためのスキルを習得するための障害福祉サービスです。
B型との大きな違いは雇用契約の有無で、A型は事業所と利用者さんが雇用契約を結んだうえで働きます。
そのため、利用者さんは最低賃金が保障された賃金を受け取ることができますが、勤務日数や時間などに条件が定められるため、ある程度安定して勤務することが求められます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害を持つ方が働くために必要なスキルを身に付ける訓練をしたり、就職支援を受けられる通所型の障害福祉サービスです。
利用期間は原則最大2年間となっており、事業所によっては訓練の過程で行った作業に対して工賃が支給されることもあります。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、就業面と生活面の一体的な支援を行う機関です。
就業に関する事だけでなく、生活習慣の形成、健康管理、金銭管理、住居問題など、日常生活全般に関する支援や助言も行っており、充実した生活を送れるよう個々のニーズに応じたサポートを提供しています。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害児(者)への支援を総合的に行うことを目的とした専門的機関です。
保健、医療、福祉、教育などの機関と連携しながら、発達障害児(者)とその家族からの様々な相談に応じ、指導と助言を行っています。
精神科デイケア
精神障害・発達障害などをお持ちの方が通う通所施設で、一人ひとりの状況に合わせた様々なプログラムを通して社会生活機能を回復し、就労、復学などを目指していきます。
精神科デイケアは精神科や心療内科などで行われていますが、実施されているプログラムの内容などは施設によって異なり、利用開始前に施設見学やスタッフとの面談などが必要になります。
【まとめ】地域活動支援センターと就労継続支援B型の違い
地域活動支援センターと就労継続支援B型は、いずれも地域社会との繋がりや居場所を提供しているサービスですが、その役割や活動内容は異なります。
社会的な孤立から抜け出すことを優先する場合は地域活動支援センターを、また、社会参加と共に働く場所が欲しいと思う方は就労継続支援B型を選ばれるとよいでしょう。
「どちらのサービスが向いているのか分からない、地域にどのような施設があるのかわからない」という方は、お住まいの障害福祉担当課に問い合わせてみることをお勧めします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2014年に行政書士資格取得後、行政書士法人にて研鑽を積み、2016年から障害福祉分野に注力。福祉事業所には欠かせない都道府県・市町村への各種申請件数は100件以上。
また、福祉施策調査を実施し、障害福祉事業所に対し、運営提言も行っている。「行政書士ありもと法律事務所」の代表行政書士でもある。